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『 マリオ・A展 』 あたかも人形のように
 

人形のようで人形でない。人間のようで人間ではない。そんな写真だ=写真。被写体は劇団ロマンチカの元看板女優、原サチコ。写真には物語がある。人形にふんした原を、べルリンで買ったおよそ八十年前のアンティークのスーツケースにつめ込み、二人だけの旅に出るというものだ。長さ八十?×幅五十?×深さ三十?のスーツケースは人形の仮の家だ。二人は一年以上を費やしてベルリンと日本を旅した。舞台となったのはベルリンのカフェ、長野の旅館、東京・銀座のデパートのショーウインドーなどだった。

無駄な肉のない少女のような肉体を持つ被写体は人形と化し、どこまでも従順にポーズをとる。ゴムを手や足の関節にまいてあたかも人形のように表現してみたりもする。それは血が通っていない人形のように無機的なオブジェとして存在する。モノクロ写真は人形となった肉体を強調し、不思議なエロチシズムを漂わす。原の手をかたどったプラスチックでできた手が置かれていたりもするように、そこには永遠に自分のものにしたいという意識があるようだ。「原との出会いなくしてこの写真は生まれなかった」とマリオはいうように互いに一番いいときに出会い、この仕事をした。マリオ・A(一九五九年スイス生まれ)の父はドイツ人、母はイタリア人。日本とドイツを往復しながら暮らしている。大小二十五点の写真のほかスーツケ-スも並べられている。(S)◇二十五日まで(日、月曜休)、東京・神宮前五ノ四六ノ十三、ミヅマアートギャラリー。

SHIBUSAWA Kazuhiko 澁澤和彦
©産経新聞 2001年8月19日 [page 11]