| ドイツ人を父に、イタリア人を母にスイスで生まれ、現在は日本とドイツを拠点に活動を続けている芸術家、マリオ・Aさんの作品集『ma poupee japonaise(マ・ブペ・ジャポネーズ=私の日本人形)』(論創社)が刊行され、同名の展覧会が東京・表参遵で開かれている。彼の作品は、日本の女優に題名通りの無機質な人形を演じてもらって撮影されている。「人形のような」無表情な顔、そして細ひもによる緊縛が取り外しのできるような関節を思わせる。彼が、現代の日本と日本人を強く意識しての「人形」であることは間違いない。【桐原良光】
〈私〉がお気に入りの人形を手に入れ、ベルリンの骨董(こっとう)屋で見つけたトランクに詰め込んで旅に出るという構成を持った写真は、モデルとなった女優(原サチコさん)が見事に人形化されていることにまず驚かされる。ベルリンの市街やカフェ、日本の旅館、デパ-トのショーウインドーなどで「カワイイ」表情を見せる人形は、〈私〉と二人きりになれば奔放な裸体をさらけ出すが、不思議とそこには工ロチシズムを感じない。作品集には、作家の島田雅彦さんの短編小説が寄せられている。小説は、ベルリンヘの機中で自分とそっくりなドイツ人ハンスと彼の”連れ”の人形サチコに出会うことから始まる。〈私〉が「本当に人形みたいな子だ」というと、男はサチコの言葉を訳して「あなたも人形みたいだそうです」という。人形と新婚旅行中のハンスは、「今の今まで出会えなかった女だ」と確信していると話り、「私自身も一体の中年ピノッキオのようなものです」と告白するのだ…。
10日夜、展覧会場で美術評論家の市原研太郎、展覧会場となったミズマアートギャラリーの代表、三潴末雄の両氏とともにトークショーを開いたマリオ・Aさんは「日本にはアイドル文化というものもあるし、無意識に『カワイイ』という一言で済ませてしまう日本文化もあると思う。原サチコさんは、2週間前からやせてやせて自分で人形になってくれた。ヨーロッパでは見つからない女性。日本じゃなかったら、出来なかった。だから僕は、これをジャパニーズ・アートといいたい」と話した。
自作パネルを背にトークショーで語るマリオ・Aさん(右から2人目)同展は25日まで、東京都渋谷区神宮前5の46の13、ミズマアートギャラリー(03/3499/0226)で。24日夜、マリオ・Aさんと島田雅彦さんのト一クショーも予定されている。
KIRIHARA Yoshimitsu
©毎日新聞 2001年8月21日夕刊 [page 6] |